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【パニック障害】
最近よく耳にしますが、一体どのような原因でどのような症状が起きるのでしょう?

ある日突然に襲う“パニック発作”の恐怖
パニック障害という病気があることをご存じでしょうか?パニック障害になる人は1.6〜2.2%(生涯有病率)、アメリカでは約3%と報告されています。また男性に比べて女性の罹患率は2倍程度とも言われています。
その症状はある日突然にあらわれます。通勤電車の中や混雑したデパートの売り場で、あるいは一人で部屋にいるときに、急に胸がドキドキし、息苦しくなって、吐き気やめまい等の症状が現れます。動悸はまるで心臓が張り裂けそうなくらいドキドキしていると感じたり、心臓をギューッとつかまれたような痛みがあったり、息苦しさはまるで窒息しそうなぐらい苦しかったりするのです。“えっ!心臓が破裂するの?”“頭の中の血管が切れる!”死んでしまうかもしれない!”など命にかかわる急病にかったような大きな不安に襲われるのです。救急車で病院へ運ばれる人は少なくありません。
しかし、病院に着いた頃には症状も収まり、心電図などの検査を受けてもどこにも異常は見つかりません。これが最初のパニック発作です。
パニック発作の多くは10分以内でピークとなり、ほとんどが30分程度で収まります。長くても数時間の内に回復します。

原因不明が不安を募らせパニック発作を誘因
最初のパニック発作はあっさりと症状が消えてしまいます。しかも、直後にお医者さんに看てもらっても、精密な機器で調べても原因不明で、せいぜい“疲れですね”とビタミン系の薬で片付けられてしまうことも・・。
しかし、1回パニック発作に襲われた人は、恐怖感をなかなか忘れることはできません。あの発作がまた起きるのでは・・。あの恐ろしい発作がまた起こったらどうしよう・・と不安を募らせていくことを「予期不安」といいます。予期不安状態の人は、軽い動悸などにも神経質になり常に自分の体の状態を気にするようになります。「予期不安」が続くことで自律神経症状を引き起こし恐ろしいパニック発作を繰り返すようになります。
この様な状態になると発作の恐怖から「電車やバスに乗れない」「人混みに行けない」など、一人で外出ができない人や、ずっと家にこもる(広場恐怖)人もいます。広場恐怖は、発作が起きたときに逃げられない状況を避ける感情とも言われ、地下道や高速道路、美容院や歯科医院なども避ける対象となり得ます。
また、以前発作が起こった場所で発作が起こりやすいこともあります。
広場恐怖が進むと当然、社会的生活がスムーズに行かなくなり、そのストレスがさらに症状を重くしてしまいます。パニック障害の人は、二次的にうつ病になるケースも多く報告されています。

パニック障害の診断は問診だけ
恐ろしい恐怖を伴うパニック障害ですが、二酸化炭素や乳酸が発作の発生を起こりやすくしていることが知られるくらいで、原因はほとんど分かっていません(治療法は確立されてきました)。最新鋭の機器を使っても診断はできず、パニック障害かどうかは、専門の医師の問診によるのみです。
パニック障害という病名は比較的新しく、以前急性不安神経症、心臓神経症と呼ばれていたもので、1992年に世界保健機関(WHO)の国際疾病分類により全般性不安障害と分ける意味で不安神経症から独立した病名となりました。
初診で「パニック障害」と診断できる医師は全国でも数%と言われ、さらに中高年の医師は学生時代にパニック障害という病名すら学んでいません。 さて、パニック発作が起こったからといってパニック障害と決めつけることはできません。本当に心臓や呼吸器、脳の病気かどうかをきちんと調べないと、命に関わる重大な事態を招きかねません。
パニック障害の診断には、問診により「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」の3つの症状について経過の的確に把握が重要となります。
一般的に“他に病的な要因の特定できない「パニック発作」が繰り返し起こり、1カ月以上の「予期不安」が続く”場合パニック障害が疑われます。

原因不明のパニック障害も完治が可能
予測できない危機に遭遇するとどんな人でもパニックに陥ります。心臓がドキドキして、呼吸が速くなり、頭がくらくらすることもあります。これは生き物としての人間本来の正常な生理反応です。パニック障害は、人の脳が勝手に危機の状態(イメージ)を自分で創り出し、それに反応した結果と考えられています。自然な生理反応の延長ですから、いくら本人が命の危険さえ感じても実際にパニック発作で死ぬような危険はありません。

さて、治療方法ですが、パニック発作の治療には「薬物療法」と「精神療法」があり効果の高い治療法が開発されています。
●薬物療法
不安感を軽減やパニック発作の発生を抑えるために用いられます。パニック障害の治療の第一段階として不可欠な治療と考えられます。薬は主にSSRIや三環系抗うつ薬などの抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系抗不安薬があります。
●精神療法
・認知療法:原因不明で大きな恐怖を伴うパニック障害の治療にとって、「パニック障害がなぜ起こるか、パニック障害は危険ではない、治療法の必然と内容」など医師による十分な説明・教育と患者の理解が最重要となります。これを認知療法と呼び、基本的でありながら最も重要な精神療法の一つです。
・行動療法:不安を感じる場所や状況に慣れることも治療法の一つです。代表的な治療が、暴露療法(暴露反応妨害法)と呼ばれるもので、不安を感じる場所にパニック障害の人を連れて行き慣れさせます。治療は、より軽度の不安を感じる場所から始め段階的に行っていきます。

その他、呼吸法や筋弛緩法などのリラクセーショントレーニングも有効です。
パニック障害は命に関わる病気ではありません。治療は、焦らずゆっくり、信頼できる医師と二人三脚で行いましょう。